パワーLED100Wを使った60cm水槽用照明の製作

JA5NAF 2017年10月2日



1 はじめに
約10年使った60cmの水槽用の照明器具が、不調になった。
グローランプ式20Wの蛍光灯2灯のものを、インバーター式のツイン管55Wに改造したものだった。
インバーター基板、ソケット、ランプを取り換えて修理したものは、別ページで紹介している。

この時思ったのは、LEDを使って水槽用の照明を自作できないか、ということだった。
既にメーカーから水槽用のLED照明が発売され、ネットを検索すると自作の例も多く発表されている。
私が特に興味を持ったのは、1個で100W、8500ルーメンの光量を持つパワーLEDだった。

水草やサンゴなどを育てているわけでもないので、こんな大光量の照明は必要ない。
蛍光灯に代わる照明装置の主役として注目されるパワーLEDに、どんな可能性があるのか、見てみたいと思った。
100Wで8500ルーメンというと、家庭用のシーリングライトに匹敵する定格である。
実験のテーマとしては、とても面白い。


2 予備実験


ともかく点灯させてみる。
放熱器にLEDを取り付け、ドライバーを接続する。
動作状況を把握するため、電圧・電流計を入れる。
ドライバーに通電すると、激しく点灯する。
目を開けていられないほど眩しいので、広告をセロハンテープでとめて、「あんどん」のようにしている。



LEDを放熱器に取り付けたところ。
2.6mmの下穴を4箇所空け、3mmのタップでネジを切る。
シリコングリスを薄く塗って放熱効果を高める。
3mm×8mmのビス4本で、固く放熱器に締め付ける。

LEDのプラスとマイナスの表示が、2つの端子とは全くトンチンカンな場所にある。
Amazonのレビューを見ても、「どちらがプラスか分からない。」という戸惑いの声が多くある。
この写真のように、プラスとマイナスの表示を下側にして、上の端子がプラス、下の端子がマイナスである。

秋月で売っている100WのLEDは、1個7900円もするが、AliExpressでは1個5〜6ドルで売っている。
Amazonでは476円だ。メーカーが違うようだが、詳しい違いはよく分からない。

また、30W〜100Wは外見が同じなので、区別できないという声もある。
これは、発光体に搭載されたLEDチップの数で判別できる。
この写真は100W用なので、10個×10列である。
50w用は、10個×5列、30w用は10個×3列である。



放熱器は、Amazonで購入できる中で最大のものを選んだ。
大きさは15cm×12cm×4.5cm、重さは599グラム、値段は1855円(送料込み)だった。

最初は冷却ファンなしで実験したが、とんでもない発熱で放熱器が手で触れないくらい熱くなった。
そこで、12cm角のパソコン用のファンを取り付けた。 
定格100WのパワーLEDの発熱量は想像以上で、フルパワーで点灯させると、ファンを回しても冷却しきれなくなる。

この状態では、75Wあたりで使うのが精いっぱいだった。
100W使用を前提に、照明器具として実装する際は、さらに放熱について考慮しなければならないと感じた。



100W用のLEDドライバーは、国内ではあまり売られていない。
秋月も、100W用のLEDチップは売っているが、ドライバーは取り扱っていない。

ネットで海外のサイトを探すと、たくさんヒットする。
アルミのケースに内蔵された製品が多いが、放熱の点で問題があるようだ。
防水を特に優先する用途でないなら、むき出しの基板で、放熱を意識した製品から選びたい。
さらに半固定ボリウムを内蔵して、制限電流を調整できるものがいい。

そういう基準で選んだのが、AliExpressで購入したこの製品だ。12.46ドルだった。
L型のアルミ板に取り付けられていて、さらにそのアルミ板を、別の放熱器に取り付け可能な構造になっている。
半固定ボリウムを回すことにより、1.9Aから3Aの間で電流調整できる。



LEDドライバーを、6.5cm×10.5cm×4cmの手持ちの放熱器にねじ止めしたところ、放熱器もかなり温かくなった。
安定動作のためには、LEDもドライバーも、とにかく発熱対策をしっかりとやる必要がある。


3 製作
予備実験の結果を踏まえて、照明器具本体を製作するために予定していたアルミ材を厚く、大きなものにした。





アルミ不等辺アングルを使用した。
厚さ3mm、長い方が50mm、短い方が25mm、定尺4,000mm。ヤフオクに出店している「秘密基地」という販売店から購入した。
同店のカットサービスを利用した。



604mm2本、162mm2本で、外枠を作成。
160mm4本で、Z型アングルを2個作り、その上にLEDを取り付けた放熱器をネジどめする。
この製作では、電動ドリルが大活躍してくれた。

さすがにプロの仕事で、カットの寸法の精度はとてもよい。
設計したとおり、ぴったりと合う。
素人が金切りノコで切ったのでは、とてもこんな精度は出せない。



アルミ不等辺アングルの他に、3mm×115mm×160mmのアルミ板を2枚用意して、底板とした。
アルミ板の厚さをすべて3mmにしていため、底はフラットとなり、作業性が向上する。



中央部分のZ型アングル。不等辺L型アングルを2本組み合わせてネジどめした。
3mmΦのネジで2箇所とめただけだが、結構しっかりする。


4 主要部品の取り付け

主要な部品を仮置きしながら、取り付け場所を決める。
LEDドライバー、中継端子、2つのスイッチは、M4のネジでとめた。
12Vのスイッチング電源基板は、3mmで長さ8mmの金属スペーサーで取り付けた。



重量が結構あるので、ステンレス製の取っ手を取り付けた。
M5のネジが切ってある。



放熱器に6個の穴をあけ、Z型アングルに取り付ける。


Z型アングルに取り付けた放熱器を上から撮ったもの。
Z型アングルを介してフレームに取り付けていて、器具全体で放熱の役割を分担している。
スぺースに少しだけ余裕があり、20cm×15cm×8cmくらいの放熱器が入手できたら、取り替えてみたい。


5 配線

2個のスイッチを使った。
SW1をオンにすると、12Vのスイッチング電源基板にAC100Vが供給され、冷却FAN、VAメーター、温度計がオンとなる。
さらにSW2をオンにすると、LEDドライバーにAC100Vが供給され、LEDが点灯する。
FANが回らない状態で、LEDが点灯しないようにした。



LEDドライバーは、L型のアルミ板の放熱器を、フレームや底板、Z型アングルに取り付けることにより、一層の放熱を図っている。
この写真の右側のパワートランジスターの周辺が、一番熱くなる。
フレームや底板が広範囲に温かくなることから、LEDドライバーの放熱は上手くいっていると考えられる。



12Vのスイッチング電源。AliExpressで4.10ドルだった。
冷却FAN、電圧電流計、温度計の電源を供給している。
この電源基板は、25Wの能力があるということで、12Vで2A程度の電流を取り出すことができる。
オーバースペックだが、これより小さな基板も値段はそれほど変わらない。

中国製だが、作りは意外としっかりしている。
パワートランジスターには放熱器が取り付けられ、取り付け穴が4か所あり、基板はきれいだ。
真面目に作られている印象を受けた。


6 点灯

誤配線がないか確認後、SW1をオンにすると、ファンが回り始め、電圧・電流計が点灯する。
SW2をオンにすると、ひと呼吸あって強力に発光する。
とても直視できないほど明るい。



コールドスタート時には、31.0V、3.02Aで、93.6Wで動作する。
約10分後には、30.4V、3.00A、91.2Wで安定し、その後3時間くらい連続運転したが、熱暴走することはなかった。
このパワーLEDのVfは、32V〜34Vくらいと聞いていたので、ちょっと低めだが、デジタルテスターで計測しても、これと同じような値であり、電圧・電流計の誤差ではないようだ。





7 電圧・電流計、温度計の取り付け

LEDの動作状況を把握するため、電圧・電流メーターの他に温度計を設置することにした。
仕様書から穴あけの大きさを確認して、プリント生基板に穴をあける。



穴をニッパーでつないで、ヤスリで整形しながら、穴を広げていく。
時々現物を合わせながら、穴にぴったり入るようにする。



プリント基板に取り付け、底板から金属スペーサーを使って固定する。

LED点灯後、すぐにチップ周辺温度が上がり始めて、点灯後約30分で、概ね45℃くらいでバランスする。
外気温にもよるが、45℃を超えることはなかった。

90Wくらいで動作していて、半固定ボリウムを回しても100Wにはならなかった。
LEDの仕様なのか、ドライバーの能力の限界なのか分からないが、まぶしいくらいに明るく、これで十分である。



電圧・電流メーターの結線図。



温度計のセンサーは、放熱器とZ型アングルをビスどめしている箇所に、卵型ラグ板を使って固定した。
LEDチップの表面温度ではないが、周辺温度を測ることによって、LEDの動作状況を監視することができる。


8 防護カバーの取り付け


水滴やホコリから部品を保護することと、部分的にAC100Vのかかる箇所が露出しているため、感電予防の対策として、上面に防護カバーを設置した。
ホームセンターでアクリル板を探したが、サンデーPETという透明のプラスチック板があったので購入した。





向かって左側の防護カバー。

サンデーPETは、アクリルより柔らかく、金ノコではうまく切れなかった。
プラカッターで両面から溝を掘るように切り進み、ある程度切ったら折るように切断するのが良いようだ。
スイッチの部分をコの字にくり抜く時は、プラカッターで両面から削った後、カッターで切り裂くように切った。
断面はバリが出るので、カッターを使って成形した。

M3-40mmの金属スペーサーで底面から浮かせて取り付けるつもりだったが、フレームの上面でつっかえ棒のようにぴたっとハマって落ちない。
かなりきつめにハマっているので、このままでも良いかなと思っている。



右側の防護カバー。透明度がとてもいいので、目立たない。


9 完成

全体を見たところ。
SW2をOFFにして照明を消し、SW1はONのままでファンを回し続けて、クーリングダウンしているところ。



60cmの水槽に設置した。
あまりの明るさに魚たちはびっくりしているようだ。





10 最後に
初めて100WのパワーLEDを扱ったが、決して使い易いものではない、というのが率直な感想だ。
何と言っても発熱が大きく、これをどのように放熱するかが、大きな問題だ。

昔、送信機のリニアアンプを作ったことを思い出した。
アマチュア無線では、送信と受信を交互に繰り返すため、放熱の条件はそれほどシビアではなかった。
照明用のLEDを送信機に例えると、フルパワーのCWで連続キーダウンしているようなものだ。
そういえば、リニアアンプでは、放熱器をファンで冷却するなど、やったことがなかった。
もっと発光効率の良いLEDが開発されて、電力エネルギーのほとんどが光に変換され、発熱が少なくなることを願っている。

海外から、LEDドライバーやスイッチング電源基板を購入して使用することは、一定のリスクを伴う。
これらの部品が、日本の安全基準に適合しているかどうか分からない。
秋月をはじめ国内の販売店が取り扱いをしないのも、そういう理由があるのかもしれない。
もし追試される場合は、自己責任でやっていただきたい。

本ページは、私の備忘録代わりに作ったものだが、どなたかのお役に立つことがあれば、望外の幸せである。


(2017年10月2日)




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