松下ツインパルックの故障と修理

JA5NAF  2013.2.24



1 故障
2005年9月に購入した松下のHFA8099が、ある日の朝、不調になった。
スイッチを入れると、小刻みな点滅を繰り返し、数分後にようやく正常に点灯する。
ランプを取り換えても症状は変わらず、器具本体の故障と思われる。

正常に点灯するまでの時間が次第に長くなり、そのうち1時間くらいかかるようになり、最後にはいつまでたっても点灯しなくなった。

外観はきれいで、できればまだまだ使いたい。

2 インバーター基板にアクセス


分解してインバーター基板を確認する。
目視した限りでは、電解コンデンサーの液漏れ、パンク、基板の焼け焦げ、変色等は認められない。

ざっと回路を解析すると、左下のCON1からのAC100VをC1、LF2、C2、L2によるフィルターを通したあと、ダイオードで整流する。(たぶん倍電圧整流)
C3で平滑して高圧の直流を作り、数10KHzでスイッチングして作った交流をT2を通してランプに供給する。

不思議なのは、スイッチングのためのパワーFETや高圧整流用のダイオードが見当たらないことだ。
基板のパターン面に取り付けているのだろうか。
D18やZD1、ZD2、C36は、コントロール部を動かすための低圧用の直流電源回路だと思われる。

不具合の原因は特定できないが、時間の経過とともに特性が変化することが原因と思われるため、3個の電解コンデンサーの容量抜けを疑う。
各コンデンサーは、C3 68μF400V  C14 100μF 63V  C36 4.7μF 63V 。
手持ちがないため、通信販売で購入することにする。


コントロール部の基板。
表面実装の部品で作られていて、どのように動作しているのかさっぱり分からない。
故障の症状から見て、これが壊れたのではないと思われる。

3 部品調達

発注していた部品が到着。代金451円、配送料450円。
チップワンストップから購入。1個ずつラベルを貼って丁寧に包装している。
私のような客ばかりだと商売にならないだろうと気の毒に思う。


68μF400Vがなかったので、68μF450Vを注文したが、形状がずいぶん違って細長い。基板に適合するかどうか。

4 修理、調整

基板のコネクターに刺さった電線をロックを解除しながら引き抜く。
どこにどの電線が刺さっていたのか判別できるように、サインペンで数字を書き込んでおく。


器具本体からアルミフレームごと基板を取り外す。


アルミフレームから基板を外そうとしたが、びくともしない。
横から見ると、基板のパターン面とアルミフレームの間をゲル状の物質でびっしりとポッティングしている。
基板を固定するとともに、パターン面のパワーFETの放熱のため、アルミフレームに熱結合させているものと思われる。
これでは、パターン面での部品のはんだ付けができないし、充填物を何とか取り除いてはんだ付けしても、今度はFETの放熱ができなくなる。
結局のところ、この基板とアルミフレームは一体のものであり、使い切りを前提に作られているということになる。


また、心配したとおり、68μFのコンデンサーは、やはり大きすぎた。どのように取り付けようか。


リード線を残してC3を撤去。


C39とFB3を倒してスペースを作り、C3の残ったリード線に新しいコンデンサーをはんだ付けした。
(これはお勧めできない。基板をひっくり返せないので苦しまぎれの方法。普通なら私もこんな無茶はしない。)


同じ方法で、C3とC14を交換。(重ねてお勧めできない。)

以上のとおり、3個の電解コンデンサーを取り換えた。
スイッチを入れたら、10秒後くらいに正常点灯するようになった。
いつまでも点滅を繰り返して点灯しなかった状態と比べると、少しは改善したと言えるのか?


解決の決め手はこのVR1だった。
今この写真では5時の位置になっているが、これを4時の位置まで回すと正常点灯するようになった。
通電しながらVRを回すのは大変危険。この基板には400Vの高圧電流が流れている。
感電したら命にも関わるので、やめた方がよい。


ともかく普通に点灯するようになった。気に入った照明器具を粗大ゴミにせずに済んだ。もうしばらく使えると思う。
近くで点灯させるとまぶしいくらいに明るい。そして発熱もかなりある。

5 反省
今回は、故障の原因が電解コンデンサーの不良と決めつけてしまった。
それ以外に原因が思い付かなかったが、最初からVR1を調整すればいいことが分かっていればコンデンサーの交換はやらずにすんだかもしれない。
イレギュラーなはんだ付けをして、無理やりコンデンサーの交換をしたことを反省している。
明らかな液漏れ、パンクであればやむを得なかったかもしれないが、本当に必要だったかどうか確信が持てない。
もし今回と同じ症状でこのページを探し当てた方がいらっしゃったら、器具を外してVR1を少し左に回してみたらいいかもしれない。
前にも書いたが、通電しながらの調整は危険を伴うのでやらない方がいい。当然のことながら、何があっても私は責任を持てない。


6 基板の交換という方法
インバーター式の照明器具の修理では、基板を入手して自分で取り換える方法がある。
この器具を購入した店に、型番を伝えて基板の見積もりを依頼したが、基板の斡旋販売はしないと断られた。
ネットで検索すれば、基板の取り寄せをやってくれるところがあるようだ。

今回も基板ごと取り換えればもっと楽だったと思うが、値段は8500円するらしい。
松下のツインパルックの場合、インバーター基板とコントロール基板がセットになるようだ。
それにたぶんアルミフレームが付いてくるので、割高になるのだと思う。
もし4000円〜5000円で基板が入手できるなら、メリットは大きいのにと思う。

7 終わりに
今はモノを修理して長く、大切に使う時代ではないようだ。
このクラスの照明器具としては、最新型の製品が20000円くらいで販売されている。
かつてグロースターター式の蛍光灯を25年くらい使った。
効率が悪く、ランプも1年ごとに交換しなければならなかったが、とにかく頑丈で長持ちした。
構造が単純だったからだと思う。

個人の技術的スキルには限界があり、多少知識があっても手に負えないモノが多すぎる。
今回もそうだったが、メーカーも最初から基板上の部品の交換を想定した作りにしていない。
回路が複雑化して、町の電気店でも手に負えないのだろう。
だから修理といえば、基板の交換しかやらないことにしたのだろう。

私たちエンドユーザーのできることは、ネットで情報交換しながら、モノを少しでも長く、大切に使っていくことだと思う。
このページは、私の備忘録がわりに作ったものだが、どなたかのお役に立つことがあれば望外の幸せである。


いちいち動作確認のために天井に取り付けるのが面倒なので、手元で器具に通電するために作ったコンセント。
丸型引掛けシーリングにACコードをつないだもの。

(2013.2.24)


参考Web Page

忘れないようにメモしたメモをなくす
http://blogs.yahoo.co.jp/kurikeikan_2008/27391064.html

店長の日記2 ナショナル照明器具の修理
http://jimnysj.blog119.fc2.com/?no=331



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